障害認定日請求すべきか?事後重症請求すべきか?どうする?(人工弁と人工血管置換で障害厚生年金3級)
Mさんは、会社の健康診断で、心雑音を指摘され、近所の専門医のA病院を受診したところ、重度の大動脈閉鎖不全症と診断され、すぐに人工弁と人工血管への置換手術の必要がありと言われ、診断された翌月に手術設備があるB病院で、人工弁と人工血管の置換手術を行い、手術を行った翌月に当センターへいらっしゃいました。
詳しくお話しを伺ったところ、15年位前に、会社の健康診断で心雑音を指摘され、たまたま手術を行ったB病院で精密検査を受けたところ、大動脈弁の逆流があるが、軽度なのでしばらく様子をみましょうと言われ、1回だけ通院したとのことでした。
そうなると、Mさんの初診日は15年前にあると判断される可能性があります。15年前に受診したB病院に確認すると、15年前の受診した受診記録は残っているが、カルテは既に破棄され、詳しいことは全く分からないという回答でした。
しかも、心臓の障害で障害年金を請求する場合は、アンケートで自覚症状や、いつ検査したか状況を申告する必要があります。
また、障害認定日は症状が治癒した時か(良くも悪くもならなくなった時)初診日より1年6か月経過日のどちらか早い日になります。
障害年金には障害認定日での請求と、その後症状が悪化した事での事後重症請求という2つの方法があります。
障害認定日での請求は、障害認定日の翌月に遡って支給されますが(請求する権利は5年で時効消滅)、事後重症請求の場合は、請求手続きを行った翌月から支給が開始されます。
人工弁や人工血管の置換は、置換した日が障害認定日として扱われ、障害の程度を表す等級は、3級以上が確定となります。
初診日がA病院ですと、人工弁と人工血管の置換手術をした日が障害認定日となり、数か月ですが、遡って請求できますが、初診日が15年前と認定されてしまうと、すでに1年6か月以上経過しているため、事後重症請求でしか請求できなくなる恐れがあり、遡って請求できないばかりか、初診日がよくわからないため、最悪の場合、不支給になるという恐れがあります。
B病院に確認したところ、初診日の詳しい証明はできないが、データに残っている日付と、過去5年以上通院していないという証明はできるとの回答でした。
障害年金には、医学的に病気が治癒していなくとも、相当程度(おおむね5年以上)対象の傷病で通院していなければ、社会的治癒という考えにおいて、5年以上前に通院していた病院を初診日とせずに、その後に受診した病院を初診日とすることができます。
そのため、B病院に13年前の受診と、5年以上通院していない証明をしてもらい、当センターで申立書を作成して、社会的治癒として、障害認定日での請求手続きを行いました。
その結果、Mさんは、A病院を初診日とする障害厚生年金3級の認定を受け、請求したときから2か月分遡って支給が決定しました。
